Ubuntu 17.10にBIOSを「破壊」するバグが発覚!原因は?対応策はあるのか?問題の詳細と現状まとめ

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Ubuntu 17.10が一部PCのBIOSを「破壊」するという、重大なバグが見つかっています。このバグにより、Ubuntu 17.10の本家デスクトップ版、および日本語Remixのダウンロードページから、インストールイメージへのリンクが消えるという事態になってしまいました。この問題についてまとめておきます。

(1月16日追記)
この問題を修正したISOイメージがリリースされています。詳しくは以下の記事をご覧ください。

(1月6日追記)
新しい復旧手順が公開されています。以前の復旧手順では回復しなかったPCも、以下のページで紹介している方法で回復できるかもしれません。

(12月28日追記)
12月25日にリリースされたLinuxカーネル「バージョン4.14.9」をインストールして起動することで、「破壊」されたBIOSが回復したという報告が出てきています。復旧までの手順は以下の記事をご覧ください。

この問題についての情報源

Ubuntu 17.10のリリースノート、およびその日本語訳に、この問題について追記されています。また、バグレポートページで最新の情報を確認できます。

BIOSとは?

BIOSはPC本体(マザーボード)に組み込まれたソフトウェアで、PCの電源投入時に最初に起動されます。起動したBIOSは、PCに搭載されているハードウェアをチェックして使用できる状態にした後、SSDやHDD、あるいはUSBメモリといった「外部記憶装置」からOSを起動するプログラムを実行します。近年のPCには、2テラバイトを超えるストレージからの起動が可能な「UEFI BIOS」(単に「UEFI」とも呼ばれる)が搭載されています。今回のバグは、OSの起動を担うBIOSを「破壊」するという重大なものであるため、大きな話題となっています。

どのPCのBIOSが「破壊」される?

すべてのPCに影響が出るわけではなく、一部のPCで問題が起こります。

ユーザーによってBIOSの「破壊」が報告された機種は以下の通りです。Lenovo製のPCが多いですが、他のメーカーでも影響を受けているモデルがあります。これらは、Insyde Software社製のUEFI BIOSを搭載しているようです。

今もユーザーから新たな報告が続いており、以下の機種でなくとも「破壊」される可能性はあります。

(12月25日追記)
各モデルのCPUとマイクロアーキテクチャを調べて追記しました。ただし、同じ型番でも別のCPUを搭載したモデルが存在するかもしれません。影響が報告されているのは、大半が「Haswellマイクロアーキテクチャ(第4世代Intel Coreプロセッサ)」、「Broadwellマイクロアーキテクチャ(第5世代Intel Coreプロセッサ)」、「Silvermont マイクロアーキテクチャ(第3世代Atomプロセッサ)」のオンボードCPUとInsyde Software社のUEFI BIOSを搭載したノートPCであるようです。これに当てはまらない場合は、BIOSが「破壊」される可能性は低いと考えられます。ただし、対策されたインストールイメージがリリースされるまで、念のためインストールは控えたほうが良いでしょう。
Lenovo B40-70
CPU: Intel Core i3 4030U (Haswell)
Lenovo B50-70
CPU: Intel Core i5 4210U (Haswell)
Lenovo B50-80
CPU: Intel Core i7 5500U (Broadwell)
Lenovo Flex 3 (1120)
CPU: Intel Pentium N3540 (Silvermont)
Lenovo IdeaPad Flex 10
CPU: Intel Celeron N2810 (Silvermont)
Lenovo G40-30
CPU: Intel Celeron N2840 (Silvermont)
Lenovo G50-30
CPU: Intel Celeron N2830 (Silvermont)
Lenovo G50-70
CPU: Intel Core i3 5005U (Broadwell)
Lenovo G50-80
CPU: Intel Core i5 5200U (Broadwell)
Lenovo S20-30
CPU: Intel Celeron N2830 (Silvermont)
Lenovo U31-70
CPU: Intel Core i5 5200U (Broadwell)
Lenovo Y50-70
CPU: Intel Core i7 4710HQ (Haswell)
Lenovo Y70-70
CPU: Intel Core i7 4710HQ (Haswell)
Lenovo Thinkpad Yoga (20C0)
CPU: Intel Core i5 4200U (Haswell)
CPU: Intel Core i7 4600U (Haswell)
Lenovo Yoga 2 11″ – 20332
CPU: Intel Pentium N3520 (Silvermont)
Lenovo Z50-70
CPU: Intel Core i7 4510U (Haswell)
Lenovo Z51-70
CPU: Intel Core i7 5500U (Broadwell)
Lenovo ideapad 100-15IBY
CPU: Intel Pentium N3540 (Silvermont)
Acer Aspire E5-771G
CPU: Intel Core i5 4210U (Haswell)
Acer Aspire ES1-111M-C1LE
CPU: Intel Celeron N2840 (Silvermont)
Acer Aspire E3-111
CPU: Intel Celeron N2830 (Silvermont)
Acer TravelMate B113
CPU: Intel Celeron 1017U (Ivy Bridge)
Toshiba Satellite S55T-B5233
CPU: Intel Core i7 4710HQ (Haswell)
Toshiba Satellite L50-B-1R7
CPU: Intel Core i5 4210U (Haswell)
Toshiba Satellite S50-B-13G
CPU: Intel Core i5 4210U (Haswell)
Dell Inspiron 15-3531
CPU: Intel Celeron N2830 (Silvermont)
Mediacom Smartbook 14 Ultra M-SB14UC
CPU: Intel Atom Processor Z8300 (Cherry Trail)

何をすれば「破壊」される?

上記のPCで、Ubuntu 17.10をインストールした場合、および17.04から17.10にアップグレードした場合に「破壊」されたという報告があります。また、Ubuntu 17.10のライブセッションを起動しただけで、インストールしなくても問題が起きたという報告もあります。

また、Ubuntu 17.10以外のLinuxディストリビューション、Antergosをインストールして同じ問題が起きたという報告もあります。

「破壊」って具体的にどうなる?

「破壊(corruption)」と言われていますが、インストールしたUbuntu 17.10は問題なく起動するため、すぐには気づかないユーザーが多いようです。しかし、BIOSがこのバグの影響を受けたユーザーから、以下の問題が報告されています。

BIOSの設定が保存されなくなるBIOS設定が、バグの影響を受けた時点での状態のまま変更できなくなります。ただし、日時だけは保存できるようです。他のメディアから起動できなくなるUSBメモリからの起動ができなくなったという報告が多くあります。「破壊」された後もDVDから起動できたという報告もありますが、DVDや別のHDDからも起動できなくなったという報告もあります。この違いは、「破壊」された時点でのBIOS設定や、ハードウェアの違いによるものかもしれません。BIOSのアップデートに失敗する、もしくは効果がないメーカーから提供されているBIOSのアップデートユーティリティの実行に失敗したという報告や、アップデートしたが問題は解消しなかったという報告があります。BIOSのアップデートにより修復できたという報告はありません。

自分のPCが「破壊」されたか確認するには?

リリースノートでは、Ubuntu 16.04 LTSのデスクトップ版でライブ起動できるUSBメモリを作成し、起動してみる方法が紹介されています。Ubuntu以外のOSでも、USBメモリから起動するようなら影響を受けている可能性はほぼ無いでしょう。

なぜ「破壊」された?

Linuxカーネルに含まれる「Intel SPIドライバー」が有効になることで、この問題が発生することが分かっています。そのため、現在はこのドライバーを無効にしたカーネルが配布されています。ただし、既に「破壊」されたBIOSを修復するものではありません。これ以上BIOSが破壊されることを防ぐための修正です。

なお、すでにリリースされ、多くのユーザーによってダウンロードされているUbuntu 17.10のISOイメージには問題のあるカーネルが入っているため、使用には注意が必要です。雑誌の付録DVDを使う場合も注意が必要でしょう。

バグレポートページによると、「破壊」の根本的な原因については、CanonicalとLenovoが協力して調査しているようです。影響を受けたPCをLenovoに提供したユーザーもいます。

「破壊」されたPCで別のデバイスからOSを起動する方法は?

Lenovoのユーザーフォーラムで、EFIファイルをrEFIndに差し替えることでUSBメモリや別のHDDなどにあるOSを起動する方法が紹介されています。これにより、別のOSをインストールすることも可能なようです。

ただし、rEFIndに差し替えたパーティションを削除してしまうと、完全に起動不能に陥るので注意が必要です。ディスクの故障に備えて、パーティションテーブルを書き出し、別のディスクに移植する方法も上記の投稿で紹介されています。

「破壊」されたBIOSを元に戻すことはできる?

現在のところ、影響を受けたBIOSを修復するソフトウェアは提供されておらず、ユーザーが対処することはできません。元に戻すには、メーカーによる修理が必要です。もし根本的な原因が判明し、ユーザーによる修復が可能になればアナウンスされるでしょう。ユーザーによる修復がどうしても不可能ならば、メーカーによる修理対応についての情報がアナウンスされるものと思われます。

(12月28日追記)
12月25日にリリースされたLinuxカーネル「バージョン4.14.9」をインストールして起動することで、「破壊」されたBIOSが回復したという報告が出てきています。復旧までの手順は以下の記事をご覧ください。

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コメント

  1. lowspecuser より:

    詳細に記載していただいたおかげで既にダウンロードしていたISOファイルを削除しました。ライブ起動だけでもアウトなようですが、試用した機材はレガシーBIOSだったオチでセーフでした。初心者はLTS以外に手を出すなという教訓にするしかなさそうですが、該当してしまった場合は復旧ツールが出てこないと洒落になりませんね。

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